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矢祭町視察報告(後編)

    もったいない図書館

今年1月に開館したこの図書館は、矢祭町の官民協働のシンボルといえる施設である。矢祭町には小さな図書施設はあったが、「充実した図書館がほしい」との住民要望が強かったという。

しかし小さな町に図書館建設の財源はなく、また、借金をしていたのでは自立は難しくなる。

そこで、町と町民が知恵を絞ったのが、町有施設(柔剣道場)を改装して図書館をつくり(施設整備費1.1億円)、本は「家の中で眠っている本を集めよう」というものであった。

アイディア発案の中心となったのは、町の自立課長(現教育長)ということだったが、これに「まちづくり委員会」のメンバーが呼応し、マスコミで取り上げられたこともあり、取り組みが瞬く間に全国に広がり、最終的に435千冊の本が寄せられた(現在は受け入れていない)。

多数の寄贈に、多少、目算が狂い、追加で「開架図書」「閉架図書」の蔵書設備を造ることになったという。この整備費に1.7億円かかったが、これも3億円の予算に対し、格安で事業実施してもらえたとのこと。

寄贈本は全国から寄せられた(送料は寄贈者負担)。寄贈者の氏名が館内に掲出されており、寄贈時のメッセージも大切に保管されている(浜松市からの寄贈者が1人いた)。

また、集まった本の分類、背表紙のラベリングやPCでのデータ管理などは、すべて町民ボランティアの手で行われた。現在の図書館運営は、20人ほどの有償ボランティアがシフトを組んで、4人程度常駐し行っている(時給は500円とのこと)。

寄贈本の中にはダブりもあるが、町内の公民館に本を配分し、「もったいない文庫」を設置している。また、遠隔地への貸し出しサービスも行っており、静岡県民(矢祭出身者)からも貸し出し依頼があるそうだ。

課題は今後のランニングコストである。人件費は有償ボランティアの活用でかなり抑えられるようだが、施設管理や新刊書への対応など、新たな負担も懸念される。しかし、矢祭のみなさんなら、知恵と協働でなんとかやっていくのではないか・・・、とも感じた。

なお、館内をボランティアの方が案内してくれたが、「多くの支援者への感謝」「町民としての誇り」がよく伝わってきた。おカネをかけるだけが住民サービスではない。「もったいない図書館」は町民協働の象徴といえる。

    商店会「スタンプ券」の活用による町の活性化

商店会の活性化として「スタンプ券」の活用もはじめた。まず取り組んだのは、「スタンプ券」で公共料金の支払いを可能にしたこと。

そんなことができるのか?・・・と思ったが、種明かしは簡単。町民がスタンプ券を役場に持参したときに、職員が商工会に行き(徒歩12分)現金化するだけのこと。行政がどこまで住民や商工会に協力するかである。

説明した自立総務課長は、「全国から問い合わせがあるが、ただそれだけのことだから、説明しろといわれても資料すらない」と笑っていた。

しかし、このアイディアは、10年程前にも提案されたとのこと。当時は「前例がない」のひとことで取り上げなかったということだった。意識改革とは恐ろしいものだ。

さらに商店会活性化のために、矢祭町では商工会で使用できる「商品券」の活用を始めた。職員の期末手当の5%以内を「商品券」で支払うとか(労基法の問題があるので本人同意を得た上で・・・とのこと)、区長(自治会長)や消防団への報酬の一部、敬老祝い金を「商品券」での支給にしたとのこと。

現在、商工会発行の「スタンプ券」「商品券」は1600万円程度の規模になっており、元気な商店会づくりの一助になっているというが、そのうち80100万円が公金支払いや納税に使われているということだった。

    第二役場

町役場では退職者の不補充で50人まで減らすとしているが、その一方で、行政サービスの低下を招かないように「第二役場」の組織化を検討中。

これは役場退職者の有志をNPO法人化し、役場業務の中で委託可能な業務を、有償でやってもらおうというもの。来年度からスタート予定で、現在、委託業務の洗い出しなど準備作業を行っているとのこと。町民協働の一施策として、今後の動きを注目したい。

    その他

・町長と議長の交際費は廃止。

・意識調査によると、町民の70%が現在の町運営を支持・評価している。

・「行政サポーター」というボランティアもある(今回は詳細を聞けなかった)。

・意識改革やサービス向上について、職員組合との関係について聞いたが、自立総務課長は「私も元委員長だが、どこを向いて仕事をするか・・・ということですね」とのこと。

・小さな町だが、先月は新藤宗幸千葉大教授(地方分権)、今月は桜井よしこ氏の講演会を実施するなど、自立した街づくりに向けた大人への教育(生涯学習)の視点もなかなかのもの。

以上

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コメント

町議会議員を日当制にしたのはこの町ではなかったではないでしょうか?

名古屋市長も、市議会議員をボランティアにしたいと言っているそうですし。

投稿: あべ | 2010年1月24日 (日) 13時57分

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