川崎市の病院事業改革
月をまたいでしまいましたが、先月訪問した川崎市の病院事業改革について報告します。
浜松の医療体制改革に資していきたいと思います。
○現状
川崎市立病院には「川崎病院」「井田病院」「多摩病院」の3病院がある。
「川崎病院」は、昭和11年開設、平成12年に400億円かけて全面改修を実施。基幹病院として、医療体制の中心となっている。
「井田病院」は、昭和24年、結核病院として開設。現在は南部地区の中核病院として機能している。病床数は443だが、平成21年度から改築を行い381床にする予定。
「川崎病院」と「井田病院」は、平成17年度から、地方公営企業法の全部適用による運営形態に変更し、経営改革を進めている。
多摩病院は、平成18年、北部地区の中核病院として新設された。指定管理者制度を採用し、「聖マリアンナ医科大学」を指定管理者としている。
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○具体的な経営改革施策
①3病院全体
平成19年4月から、クレジットカードによる支払いをスタート
看護士確保策の充実
②直営2病院
特殊勤務手当の見直し
保健看護手当 9000円/月×約763人 (⑱削減額 約8200万円)
病院勤務手当 8500~10600円/月×約766人 (同 約1億円)
不規則勤務手当 早朝@500円など (同 17.4万円)
週休日の振替手当 168人 (同 451万円)
土日出勤手当 @1000円 692人
この他、「オペ手当」など廃止した(オペ手当廃止により、オペが減り、減収になったとのこと)
委託料の見直し
診療収益改善の取り組み
外来患者数は増加している。
延入院患者数は(病床削減により)減っている。また平均在院日数も18.7日から16.7日へ前年比2日減となっているが、入院単価は、前年比1788円増の36631円となっている。(ただし、この数字はまだまだ低く、多摩病院や他の同規模病院では約5万円程度ということ)
③川崎病院
救命救急センターの開設
④井田病院
地域がん診療連携拠点病院の指定
患者送迎用シャトルバスの運行(CS調査により、アクセスが不便との声があったため)
⑤多摩病院
増床計画の前倒し
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○川崎市当局の考え方(質疑応答などから)
①2病院
「独法」を採用しなかったのは、最初から「全適」で進めていたため。
病院管理者により、「給与・手当の高さ」を全職員に情報開示し、置かれている状況を共有化できた。
人事制度も独自運用できるようになった。人事評価も行い、医師一人当たりの収入を科ごとに他病院と比較し、業績優秀な医師にはボーナス加算を行っている。給与制度を独自にやることもできるが、実際は市の制度に準拠せざるを得ない。
以前は20人弱の課体制だったが、組織として独立した分、本庁組織が「病院局」となり、人事や採用、給与厚生などの業務のため、人員が36人に増え、経費負担増になっている。
医師、看護師、コメディカル担当者は病院で採用しているが、事務職員、電気機械職は市人事委員会で採用している。
病院はマンパワーが重要であり、生産性向上だけでは測れない。「独法化」すると「経営」を見すぎてしまうのではないか。非効率なモノをやらなくなると行政施策を行いにくくなる。自治体病院の必要性を考えねばならない。直営の方が行政の意向を反映しやすいと考えている。
副院長を増員し、看護部長兼務者を入れた。医師はタテ割りで自分の診療科のことしかわからないが、看護師は診療科をまたいでベッド管理できる。今では看護師の情報により他科のベッドも使い、稼働率を高めている。
今後は、川崎病院の償却費負担に加え、団塊世代の退職金負担が大きくなり、さらなる改革が必要と認識。
②多摩病院
「多摩病院」は、開設時の機器は市が用意するが、追加や補修は管理者が行う。
運営管理について「指定管理者」との基本協定の中で、公募市民を含む運営協議会によるチェックを行うことにしている。
総務省の繰出金基準に従い「政策的医療交付金」を支払い(3.5億円)、指定管理者負担金として、派遣職員2人分の人件費、火災保険料、減価償却費を負担する。
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